海の叫び

6/13
前へ
/2816ページ
次へ
「ライオンやゾウも人を殺す生き物よ。だけど、サメのように悪者扱いはされない。やはりそこには、人間の傲慢さがあるように私は思えてならないの」  リナはエイヴィアから目を離さず、何かを伝えようとする力のある視線を送った。  思わず、エイヴィアの背筋が硬直する。 「人間がサメに襲われるのは、彼らの領域を犯した時。海に入ってしまえば、私たちはサメにとって獲物にしか見えない。それじゃあ、食べられても文句は言えないわね」 「サメが人間を襲う頻度っていうのは、結構高いんですか?」  真剣そのものといった表情で、今度はレオンが訊いた。飲みかけのコーヒーのことなどすっかり忘れ、リナの話に聞き入っている。 「いい質問ね。人間の矛盾を突いてるわ」  リナが微笑んだ。 「サメによる被害は、実は極めて少ないの。イタチザメやオオメジロザメは比較的人間を襲うことが多いけど、それでもライオンによる殺害事件の件数には遠く及ばないわ」 「無知な人間が、勝手にサメをモンスターのように囃し立ててしまったってことなんですね……」  レオンは少し俯いた。  いつもサメを血も涙もない海の怪物だと言っていた過去の自分が、なんだか情けなく思えてきた。  知らぬ間に、人間たちから悪役にされる。サメからしてみれば、いい迷惑だ。
/2816ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3278人が本棚に入れています
本棚に追加