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「ライオンやゾウも人を殺す生き物よ。だけど、サメのように悪者扱いはされない。やはりそこには、人間の傲慢さがあるように私は思えてならないの」
リナはエイヴィアから目を離さず、何かを伝えようとする力のある視線を送った。
思わず、エイヴィアの背筋が硬直する。
「人間がサメに襲われるのは、彼らの領域を犯した時。海に入ってしまえば、私たちはサメにとって獲物にしか見えない。それじゃあ、食べられても文句は言えないわね」
「サメが人間を襲う頻度っていうのは、結構高いんですか?」
真剣そのものといった表情で、今度はレオンが訊いた。飲みかけのコーヒーのことなどすっかり忘れ、リナの話に聞き入っている。
「いい質問ね。人間の矛盾を突いてるわ」
リナが微笑んだ。
「サメによる被害は、実は極めて少ないの。イタチザメやオオメジロザメは比較的人間を襲うことが多いけど、それでもライオンによる殺害事件の件数には遠く及ばないわ」
「無知な人間が、勝手にサメをモンスターのように囃し立ててしまったってことなんですね……」
レオンは少し俯いた。
いつもサメを血も涙もない海の怪物だと言っていた過去の自分が、なんだか情けなく思えてきた。
知らぬ間に、人間たちから悪役にされる。サメからしてみれば、いい迷惑だ。
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