いち

3/10
前へ
/19ページ
次へ
描かれた目は、エジプトの壁面に描かれるような、ややリアルな形の、けれどどこかグロテスクな、無機質な目でした。                                              「いたんだよ」                               兄は、どこか得意そうな顔をしていました。                               おそらく、その時の私は、酷く困惑したような顔をして、兄を見ていたのでしょう。                               「いたんだ、きのう」                               そう言って、兄は窓を見つめたよう思います。                               窓の外、白黒の幕は庭木の緑の中にぽっかり浮かんでいました。                               「だから、じいちゃん、しんじゃったんだよ」                               UFOを黒く、黒く塗り潰しながら、兄は言いました。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加