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祖父の葬儀から三日後、兄は友達と連れ出ってセミ取りに出かけ、日が暮れる頃に友と別れ、そして、二度と家に帰ってはきませんでした。
いくら待っても帰ってくる兆しのない兄を父が、母が、駐在さんが、兄の友人達の親たちが、近所の人々までが、夜がふけるまで探しました。
けれども、結局見付かりませんでした。 そのかわり、立ち入りが禁じられ、溜め池の水面に、片一方の靴がみつかりました。
溜め池を囲ってたフェンスには、子供が通れる程度の穴が空いており、そして、見つかった靴は、兄が履いていた、卸ろして間もないスニーカーでした。
溜め池には、あまりに深く泥がたまり、ねちょねちょした真緑の藻が生い茂っていたため、その水底に兄がいるのかどうかは分からなかったそうです。
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