5人が本棚に入れています
本棚に追加
いなくなってしまった兄の葬儀はひっそりと行われました。
無理に行われなくともよい、と言われるなか、父と母は
『周りの人に、もうこれ以上迷惑をかけてばかりはいられないから』とも、
『このままじゃあ、区切りがつけられないから』とも、言いました。
からりと晴れた少し肌寒い日に、私たちは、白い小さな、からっぽの棺を、兄の代わりに冷たくひえた穴に埋めたのです。
悲しい事故だ
誰も彼も、そう言いました。
そして溜め池のフェンスは新しく張り直され、すべてが終わりました。
けれど、けれど私は知っていたのです。
最初のコメントを投稿しよう!