第3話.温泉湯けむりパラダイス

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夜7時。 生徒達は宴会場に集まり、1人1人のテーブルの前には豪華な夕食が並べられていた。 「うぉー!刺身に天ぷらに焼き肉!早く食いてぇなぁ~」 「黙って待ってろって力蔵。すぐに食えるんだから」 太郎はそう言って、ヨダレをダラダラと垂れ流している力蔵を止めた。 その時、校長がワイングラスを持ち、座布団の上から立ち上がった。 「それでは皆の衆!乾杯じゃ!いやぁー、やっぱり修学旅行はいいのぅ!まさに青春の1ページじゃ!思い出すのぅ……約50年前の青春の日々を。あの頃のワシは筋肉質でスマートな体型で、髪だってフサフサ…」 「かんぱーい!」 『かんぱーい!!!』 校長の長話をマチ子先生が無理矢理終わらせ、先生及び生徒達は豪華な夕食へと箸を伸ばした。 「うめぇ!!婆ちゃんのメシの3倍うめぇ!!なぁ次郎!?」 「俺はお前の婆ちゃんのメシの味なんか知らねぇよ力蔵。てか食いながらこっち向いて喋るな……って、さりげなく俺のエビ天食ってんじゃねぇよこのヤロー!」 そう怒鳴って次郎は力蔵に掴みかかった。 「すっ、スマン次郎!今口から出すから……」 「……いや、汚いからやめてくれ。もういいから」 そう言って次郎は、ショボンと肩を落とした。 「なんやねんな次郎。エビ天くらいで大袈裟すぎやで」 「じゃあ神崎のもーらい♪」 そう言って次郎は、美花のエビ天をパクリと口に放り込んだ。 「なっ、何さらしとんねんドアホ!」 「エビ天くらいで大袈裟だぜ神崎~」 「ぐっ……」 次郎に痛い所を突かれた美花は、返す言葉が見つからず黙ってしまった。 「やれやれ、食事くらい静かにできないんですかねキミ達は」 「やかましいわアホメガネ!アンタには関係ない……って、何でアンタの夕食だけフランス料理のフルコースやねんな!?」 そう言った美花の目線の先には、美花達の豪華な夕食より更に豪華なフランス料理が所狭しと並べられていた。
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