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「…不意を突いて叩くしかないわね……」
いくら力の差があったとしても不意打ちをすれば勝算はある。叢の中でじっと息を殺す。が、不利な状態に自ら乗り込まなければならなくなった。
「きゃあぁああっ!」
「えっ…!?」
突然聞こえてきた少女の悲鳴に、ハッと声をする方を見ると女の子が野花やら木の実をいれた籠を落としている。
その視線の先にはアタシが狙っているベア―…。
「何してるのっ!早く逃げなさい!!」
そう声を掛けながら少女の元へと駆け寄って剣を構える。だが、腰を抜かしてしまったのか、立ち上がろうとしない。
(アタシ一人で倒せるのかさえも分からないのに…ちょっとヤバいかも……)
そんな事を考えてる時だった…。あの魔法使いと再び出会ったのは……。
「ちょっとマグぅ~!依頼にあるお嬢さんがここに居る訳がないっしょ?」
「ぎゃおぉおっ!!」
「サーセンでしたァアアア!!マグ噛まないで!マジで痛い!流石に美味しいもの以外にほっぺたを落としたくなーいっ」
初めて会った時と同じようにドラゴンを肩に乗せて、とんがり帽子を左手で押さえ、うずを巻いたペロペロキャンディを舐めながら。
「…―ん?…あれ…?君って町で会ったよね?元気だった~?」
まるで旧友と出会ったかのように手を振りながら笑っている。
「馬鹿っ!!前っ!前を見なさい!!ベアがいるのよ!!」
くるりと振り返り、真面目な顔をしながら、ふざけたようなリアクションをとる。
「うわ~デカっ!熊肉のシチューパイ包み焼き何人前だよ!?」
「ふざけてる場合!?」
「いやマジ!30人前は軽く作れるね!!」
正直、本気なのか冗談なのか良く分からない。
「てか、何で君はココに居んの?散歩?」
「違うわよ!ベアを退治しに来たのよ!!こんな大きいなんて聞いてなかったけど」
「なの?…つーか、あれベアじゃなくて、クイーンマウンテンベアだけどね。亜種だから」
亜種ということはアレを倒そうが報酬は入らない。
「あのハゲ……!!」
「ハゲてる人に本当の事言っちゃいけません!可哀想じゃん?」
「良いじゃない。騙しやがったんだから」
「その分きっちり、慰謝料せがめば良いよ」
…どうゆう訳か、知り合って間もないというのに会話が弾む。
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