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『ママの聖子です。晃治君ね。本気なの?この仕事、そんなに甘くないわよ。』
ママは、俺を真っ直ぐに見ていた。
『俺…本気です。昔から辛かったんです。もう自分に嘘つきたくないんです。お願いします。俺をここで、働かせて下さい。』
友子姉さんは、煙草を吸いながら、俺とママの話を黙って聞いていた。
『ママさぁ、この子昔から見てきたんだぁ。私には、分かってあげられないけど、きっと辛い思いしてたんだと思うんだ、だから、楽にさせて上げて欲しいんだよ。』
『分かったわ。ちょっと待っててね。和恵ちゃんちょっと来てくれる?…。今くる子は、うちの店のNO.1よ。その子に色々ついて、覚えなさい。ここに、居る女の子達は、貴方と同じ気持ちを味わった先輩達だから、安心してついていきなさい。』
ママの言葉が嬉しくって、涙が流れ出た。
そして、女として、教育してくれた和恵さんに出会った最初の日だった。
『は~い。ママ呼んだ?あらっママ何可愛いらしい子泣かせてるのよ。どうしたの?イジメられたの?ほら、涙拭いて。』
和恵さんは、ハンカチを俺に差し出してくれた。
俺は、その優しさに、又、声をあげて泣いてしまった。
『有難うございます。嬉しくて…。嬉しくて…。』
言葉になって無かった。
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