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博士は熱心な男だった。
数年経った今、あれから研究員は増え続け、極秘の計画の対象はずっと昔に死刑囚だけでなくなった。
だからこそここまで来たのだろう。
テレビは淡々と再現映像と共に語り続けた。ニュース番組、画面の端っこには博士の名前、口々に博士を語る評論家、それに相づちをうつ司会者、客席の人達。
「本当に容疑者が捕まって良かった。意味の分からない研究が行われていて、更に一般人までも無理矢理被験者にするなんて、極悪人ですね…」
その後は電源を切ったので、画面が真っ黒になっただけだった。
リモコンをテーブルに戻した後、ソファに深く座った。
ため息のあと
「きっと日本中のテレビの前の人も相づちうってるだろうな。僕は被害者じゃないけど完全にいい人なんて何処にもいやしないと思う。悪い所もあり、良い所もある。でもそれがわかったからこそ、完全でなくていいから少しでもいい人近づきたいものだ」
そして彼は目を閉じた。
「…と彼の体験はここまでです。
体験している記憶のなかで眠ったあと自然と元の世界に戻ります。その時には既に自宅に移してあり、矛盾は起きません。こう体験すれば少しでもいい人になるのではないでしょうか…いかがですか……」
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