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「実、はさ……、あの後、おかあ、さん、ね……私が、話すきっかけを、作ったのは、入った宗教の、おかげだって、言ってた」
「ほう、宗教に入ったのか」
「うん。だから、私が、自分から、動いた、って――」
その話を聞いた時、正直納得できなかった。私が自分から動こうと決めたのは、この猫のおかげだ。
それを、宗教のおかげだなんて!
あぁ、昨日の出来事が頭の中で、映像として浮かび上がってきた。
「マリが、こんなにしてくれているのは、お母さん、宗教に入ったおかげだって思うの」
「お、か、あさん、入った、の!?」
私の顔から反対の色が見えたのか、母はあわてて、
「大丈夫よ。お母さんもね、始めは胡散臭いと思っていたけど、意外とみなさんいい人だし、お金もね、かかるのは入会費の三○○○円だけなのよ」
母は、その宗教のいい所だけを、必死に説得するように話した。
しかし、私の頭の中にはその宗教の悪い部分だけが、渦巻いていて、母の声を寄せ付けようとはしなかった。
長く語る母の言葉を聞いていて、私は心が折れたように無意識に頭を縦に下ろした。
「いやぁ、入って正解だったわ。きっとマリもすぐ良くなるわね。――あ、祈祷の時間だわ」
そう言うと、母は私を残して奥の部屋へ姿を消した。
数秒後、まるで誰かを呪い殺すかのような滑舌の悪い、低い声が聞こえてきた。
私は逃げるように、急いで、でも転ばないよう慎重な足取りで、階段を上った。
「きええぇぇぇ~~ッ!!!」
と、背後で母の奇声が聞こえた時、本当に死ぬかと思った。
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