7/7
前へ
/21ページ
次へ
「う~……ん、うぅ~ん」 私はかなり真剣に考え、頭の中という小宇宙を駆け巡っている、言葉の一文字一文字を手ですくい採っていた。 ウォルガ……ナーシュ……リジー……ロウキ…… などと、最近読んだケータイ小説のキャラの名前ばかり浮かんでくる。 そんな中、あーでもないこーでもない、と試行錯誤を繰り返し、ついに、 「思、い、ついた、わ」 「言ってみろ」 私は胸を張って、意気揚々と大きな声で告げた。 アップロピュテー=キリグロマリア=ラーソリー! 略してアキラ! カッコイイし、略せるから便利だ。 しかし、猫の反応は、 「却下だ!長すぎる」 不評だった。 私は、ちぇ、と呟いて再び考えた。 ――そもそも何でこの猫と話しているんだっけ? そうか、事故に遭ったからだ。 で、どうしてか、機能を停止したはずの耳から、この猫の声が聞こえるんだった。 事故さえ、なければ、こんなことは当然起こらなかったに違いない。 ん。どうして事故を起こしたんだっけ? そっか……ヒロを見かけて―― 「ヒロ……ヒロが、いい」 「おいおい、さっきからおめぇは、猫につける名前じゃないのばかりを挙げてるぜ。普通なら、ポチとかペスだろう?」 「わかっ、て……ない、なぁ」 私は、チッチッチと人差し指を左右に振った。 「ヒロ、てのは、ね。今、流行の、なまえ、なのよ」 ま。それは嘘だけど、この猫にはヒロの名前がふさわしい。 「そ、そうなのか?」 半信半疑なこの猫は、まんまと騙されて、結局は、 「まぁ、いっか」 「よろしい」 「名前も決まったことだし、じゃあな」 「う、ん。また、ね。ヒロ」 私の王子様であるヒロは飛び去った。私に呪いをかけたまま。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加