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「う~……ん、うぅ~ん」
私はかなり真剣に考え、頭の中という小宇宙を駆け巡っている、言葉の一文字一文字を手ですくい採っていた。
ウォルガ……ナーシュ……リジー……ロウキ……
などと、最近読んだケータイ小説のキャラの名前ばかり浮かんでくる。
そんな中、あーでもないこーでもない、と試行錯誤を繰り返し、ついに、
「思、い、ついた、わ」
「言ってみろ」
私は胸を張って、意気揚々と大きな声で告げた。
アップロピュテー=キリグロマリア=ラーソリー!
略してアキラ!
カッコイイし、略せるから便利だ。
しかし、猫の反応は、
「却下だ!長すぎる」
不評だった。
私は、ちぇ、と呟いて再び考えた。
――そもそも何でこの猫と話しているんだっけ?
そうか、事故に遭ったからだ。
で、どうしてか、機能を停止したはずの耳から、この猫の声が聞こえるんだった。
事故さえ、なければ、こんなことは当然起こらなかったに違いない。
ん。どうして事故を起こしたんだっけ?
そっか……ヒロを見かけて――
「ヒロ……ヒロが、いい」
「おいおい、さっきからおめぇは、猫につける名前じゃないのばかりを挙げてるぜ。普通なら、ポチとかペスだろう?」
「わかっ、て……ない、なぁ」
私は、チッチッチと人差し指を左右に振った。
「ヒロ、てのは、ね。今、流行の、なまえ、なのよ」
ま。それは嘘だけど、この猫にはヒロの名前がふさわしい。
「そ、そうなのか?」
半信半疑なこの猫は、まんまと騙されて、結局は、
「まぁ、いっか」
「よろしい」
「名前も決まったことだし、じゃあな」
「う、ん。また、ね。ヒロ」
私の王子様であるヒロは飛び去った。私に呪いをかけたまま。
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