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「マリ、あぶない!」
友人、サチエの叫び声を聞いた時、私の体はほぼ百パーセント助からない状態だった。
私の不注意だった。よそ見をしていた私の体に、大型の、四トン車が怪物みたいに突っ込んできた。
私は金縛りにあったように、微動だにできなかった。
だってしょうがないじゃない。
向かい側の歩道に、大好きなヒロくんが歩いていたのだもの。
彼の姿を見かけた時、私の体は操り人形と化していたみたい。頭の中は虚ろ、のそりのそりと、無意識に彼に歩み寄ろうとしていたのね。
それはそれは恐ろしい呪いにかかったみたいで、バリバリ赤信号真っ最中だというのにも気付かなかった。
さらに彼の呪いは、心臓の動きをいつもの三倍早くさせて、乾いた瞳と唇をうるわせた。
息ができなくなり、胸が苦しかったけど、
けど、
けど、私の心は、嬉しさで一杯だった。
その瞬間を轢かれたのだ。
私の心が、彼、ヒロに惹かれたまま――
「マリッ! マリィッ!」
サチエは、死にかけの私を手加減なしで揺さ振った。
結構いたい。楽に死なせてくれないサチエを、末代まで怨もうと決めた。
「マリぃ……どうして笑っているのよォ!」
どうやら私は笑っていたらしい。これも呪いかしら?
そして私の意識は、泥沼の中へ頭ごと沈み込むように闇へ落ちていった。
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