三ツ星こよし

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俺逹は三人だ。   いつからかは知らない。いつの間にかこうなっていた、というところだと思う。   俺達は教室にいた。何かをするわけでもなく、緩やかといった具合に談笑しているわけだが、今日は少し沈んだ空気が流れていた。   「テスト、どうだった?」   「おりゃさっぱりじゃ」 俺の問いに三人のうちの一人、智樹(ともき)は窓際の席で壁に寄りかかりながら腑抜けた声を出した。後程智樹の答案を見せてもらうが、確かにさっぱりで、俺達三人の中で最も点数が低かった。   智樹はガラの悪そうな風貌をしているが、実際はそれほど気性が荒いわけでもなく、どちらかというと穏やかな性格をしている。しかし、人というのはやはり見映えに目がいき、大抵の人は引け腰だったりする。   ちなみに、“おりゃ”というのは“俺”という意味で、智樹の言葉はとても独特である。どこかの訛りが混じってたり、自前のものの時もある。なぜそんな口調になったかは智樹自身でも分からないらしい。   「僕はまぁまぁだったよ」智樹とは逆の位置にいる修(おさむ)は微笑しながら言った。   「うるさい。お前には聞いてない」   修は俺達の中でずば抜けて成績が良く、学年全体として考えても上位の方だ。見た目大人しそうな顔つきをしているが、俺や智樹より遥かに意地が悪く、頭が良いだけあって言葉遣いと世渡りが非常に上手い。人当たりは良いがその裏で嘲笑していたりするので、まったく良い性格してると思う。   「で、与作は?」 修は俺に訊いてくる。訊かれた瞬間俺はあからさまに顔を歪め、訊いてきた修の顔は薄く笑みを浮かべている。たぶん俺が答えると同時に修は心の中で大笑いするのだろう。   俺はしょうがないといった具合にカバンから答案用紙を取りだし、二人に見せてやった。受け取った二人は二人は感想に困るといった表情をして俺の答案用紙を見た。   「パッとせんなぁ」 「微妙だね」 二人は同じ感想を述べた。自分でもこの点数は感想に困ると思う。なんというか、良くもなく悪くもない点数である。   「智樹には言われたくない」   「それは言えてるね」   「おめぇらだまっとれ。おりゃを引き合いに出さないでくれ」   俺達にとってはありふれた光景。高校二年である今までずっとそれが俺達にとっての優先すべき日常だった。俺達の他には干渉されることのない“唯一”だった。
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