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翌日、正午。
富士山のふもと、狼燕のアジトまで辿り着いた烈火達。
そこへ、一人の少女が現れた。
歳は17、8歳位だろうか。背中まで真っ直ぐ伸びた綺麗な黒髪の彼女は、まだ少しあどけなさの残る顔立ちをしていた。
見る限り武装している様子はなく、敵意も感じられない。
烈火「…何者だ?」
敵意は感じないが、警戒しながら尋ねる。
「烈火様ですね?警戒なさらなくても結構です。
私は、狼燕様よりあなた方の案内を任されております、咲耶(さくや)と申します。
どうぞよろしくお願い致します」
その時、ただ一人、小金井は驚きのあまり声が出なかった。似ているのだ。咲耶と名乗る彼女が、今は亡き少女、紗弥に…
しかし、小金井の異変に気付いた者はいなかった。
烈火「案内ね…狼燕のやつも気が利くじゃねえか」
風子「烈火ちょっと待ってよ!罠かも知れないじゃん!」
烈火「言ったろ?罠だろうが進むしかねえって。それに、罠だったら突破すりゃいいさ」
水鏡「昨日の狼燕の話の後から、ここまで来る道のりでも敵の気配を一切感じなかった。
どうやら狼燕って男はそんな卑怯な戦いは嫌いのようだ。ここまで来て罠もないだろう」
風子はしばらく不服そうにしていたが、渋々納得したようである。
咲耶「信じてもらえそうですね。では、こちらへ」
そう行って建物の中へと歩きだした。
長い一本道を咲耶に続いて歩いて行く。窓がないのに明るいのは、灯の魔導具のおかげである。
しばらくは黙って歩いていたのだが、そんな状況に息が詰まりそうになったのか、土門が口を開いた。
土門「…なぁ。咲耶ちゃんも狼燕の仲間なのか?」
小金井「……」
ジョーカー「せやせや、自分も気になっとってん」
少し戸惑いを浮かべながら答えた。
咲耶「…私は狼燕の手下に襲われた村の生き残りです。
村人はみんな殺され、若い女だけ連れて行かれました。私はその一人なんです」
それを聞いた烈火達は衝撃のあまり足が止まった。
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