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「…あの、夕飯の支度をしたいので早急に済ませたいのですが」
そう呟いた少年を見た二人は、彼の伝えたい意志とは関係なく微笑む。
「そうでしたね、ウィル君。では続きをお願いします。…もうすぐ私が登場するワケですね?」
「はい、ヴィル先生」
ヴィルと呼ばれた青年の前には数枚の羊皮紙が重なっている。
それには、使い古されたペンを用いて書き連ねられた丁寧な文字が紡がれていた。
「この事件もまた非常に興味深い話なのは確かですが、それ以上にウィル君と初めて会った事件でもあります。なるべく丁寧に頼みますよ、ウィル君?」
「解りました。では、一昨日の朝の話に戻るのですが……」
私立探偵、ヴィル・ヴェルセリウス。
彼の過去を知る者は数少なく、気付けばそこで探偵業を営んでいた。
誰もが認めるその知識量と推理力は、大陸一と謳われている。
゛至極の知性゛の二つ名で知られる彼は、一人の靴磨きの少年と出会う。
それが物語の始まりとなった。
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