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「ウィル君、少し注文してもよろしくて?」
「…はい、何ですか?」
彼女の履いている革靴は、幸運にもパルテおじさんのものと同じ型の靴だった。
この女性は話下手らしく、ウィルから話し掛けても一向に盛り上がりが無い。
ところが、良くも悪くも作業が順調に進む中、いきなりあちら側から声がかかるではないか。
「革靴の紐なんですけど、少々キツく絞めすぎたみたいですの。軽く緩めて下さいな。」
そう言って彼女は、申し訳なさそうに頭を軽く下げた。
「分かりました。程よいキツさになったら、言ってください。」
服装といい、注文といい、この人の雰囲気はどうも怪しい。
パルテおじさんの紹介という事らしいが、ウィルは少しずつ違和感を抱くようになっていた。
(あれ、この結び方、へんてこだぞ……。)
しかし彼の気は、結び目の方にすぐそれた。
細い紅色の紐が、複雑に絡んでいるようにしか見えないからだ。結び方以前に、ただ固めただけ。そう捉える方が自然な形だった。
(でも折角パルテおじさんが紹介してくれた人だし…。頑張らなきゃ!)
そう少年は思い立った。
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