画策

3/13

14人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「ウィル君、少し注文してもよろしくて?」 「…はい、何ですか?」    彼女の履いている革靴は、幸運にもパルテおじさんのものと同じ型の靴だった。  この女性は話下手らしく、ウィルから話し掛けても一向に盛り上がりが無い。  ところが、良くも悪くも作業が順調に進む中、いきなりあちら側から声がかかるではないか。   「革靴の紐なんですけど、少々キツく絞めすぎたみたいですの。軽く緩めて下さいな。」    そう言って彼女は、申し訳なさそうに頭を軽く下げた。   「分かりました。程よいキツさになったら、言ってください。」    服装といい、注文といい、この人の雰囲気はどうも怪しい。  パルテおじさんの紹介という事らしいが、ウィルは少しずつ違和感を抱くようになっていた。   (あれ、この結び方、へんてこだぞ……。)    しかし彼の気は、結び目の方にすぐそれた。  細い紅色の紐が、複雑に絡んでいるようにしか見えないからだ。結び方以前に、ただ固めただけ。そう捉える方が自然な形だった。   (でも折角パルテおじさんが紹介してくれた人だし…。頑張らなきゃ!)    そう少年は思い立った。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加