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奇怪で話下手な客の注文を処理するのに、20分要した。
「このくらいでいいわ。じゃあ、さっきと同じような結び方でやって頂戴。」
10分前に、そう言われた。
随分と無理難題を押しつける客だなぁと、ウィルは次第に思い始める。いくらパルテおじさんの紹介と言っても、これは流石に変すぎる。
(失礼かもしれないけど―)
「『―もう一度、パルテおじさんの紹介かどうか尋ねてみよう。』
君はそう考えてますね。」
「!!?」
驚きだった。
「何故僕の気持ちが分かるの?
そしてこの声は誰? ウィル君は気付いてるはずです。君は賢い子みたいですから…。結果だけを受け入れ、そこから過程に価値を見出だす技量も精神もある。素晴らしいです。」
年頃の、少し落ち着いた青年。声音からはそんな雰囲気が感じられる。
「あの、貴方は?」
少年がゆっくりと顔をあげると、目の前に見えたのはへんてこな貴婦人ではなかった。ウィルの両目が驚愕を語る。
「あぁ、身分を偽って申し訳ございません…。私、ヴィル・ヴェルセリウスと申します。私立探偵を営むイレケイ族です…。」
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