ブラックコーヒー

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「千早さん、今日の調理実習で作ったクッキーです。 良かったらどうぞ!」 そう言って、私の手に袋を押し付けて行く女子。 これで何回目だ。 千早は、溜め息しつつ前髪をかきあげた。 身長は170センチ。 涼やかな目元と高めの鼻が与える印象は、格好良いというところだろう。 仮にも女の子である千早にとっては全くもって不本意である。 この容姿のおかげで、女子にもててしまっている。 千早の通う高校は由緒正しき女子高である。 お嬢様達が、一時の幻想に酔いしれるのは勝手だか。 「その対象が私であることが気に食わない。」 千早は忌々しげに呟いた。 本来、女の子じみた性格でない千早を更に(格好良く)思わせるのはその言葉づかいだ。 「ぁ。もうこんな時間か。急がないと!」玄関近くにかかっている時計が目に入った千早は早足で学校をでた。
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