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過ぎていくエンジン音。
千早は、彼が自分を庇ってくれた事を理解した。
この道は狭く、車も通りにくい場所なのだ。
「だいじょおぶ?」
低く、甘い声が千早の耳にするりと入り込んだ時、千早は我にかえった。
「ぁ。ぇっつ。」
「ぅん?」
言葉にならない単語を喘ぐようにもらす千早に、青年は微笑み相槌をうつ。
見上げた先にある柔らかい微笑。
幼子を相手にするような調子だ。
顔が熱くなり、頭がくらくらする。
(千早さんってクールで格好良いよね)
って言われているいつもの私、もどって来い!
「ぁりがとうございました。」
やっとお礼を口にできた千早。
未だにに支えてくれている青年から離れようとするが、彼は腕の力を緩めない。
「もう、平気なんですけど。」
いつもの調子が戻ってきて、つい可愛くない言い方になってしまう。
それでも彼は微笑を崩さない。
「いつも、この道で会うね。」
「っ!私のこと知ってたんですか!?」
青年が自分を知っていたことに少しの喜びを覚え声が大きくなる。
「うん。かわいいなっていつも見てた。」
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