ケチャップ

5/5
前へ
/18ページ
次へ
    ちらっとテーブルを見ると、メモがあった。実際に見たことは無いけれど、きっとこれは"レイコサン"の字。細いところがよく似てる。   「ユウくん。逃げないでくれてありがとう。でも、さようなら」   ぼくはそのメモを心のなかで4回読んでから、びりびりにちぎってゴミ箱に捨てた。となりにあった千円札は、大事にだいじに折りたたんだ。 それから初めて"レイコサン"の部屋に行き、上から2番め・右から3番めの引きだしからはさみをちょうだいした(ママがこの前はさみをなくしたことを、ぼくはちゃんと覚えている)。 千円札2枚を右ポケット、はさみを左ポケットに入れて、ぼくはぼくのじゃない誰かのスニーカーをはいた。それはかっこよくて、ぼくのサイズにぴったりなのだ。   とんとん、とつま先で床をたたいて、右手でお札を触る。 とりあえず、いつものケチャップを買いに行こう。   end.
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加