夏の女の子

5/8
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
【誘引】 俺は勉強が嫌いって訳じゃない テスト期間が終わって、今日は31日…そろそろ夏の日差しも弱くなって来た。 そういえば、テスト用紙が帰ってきた。テストの内容は、普段の授業内容をきちんと聞いておけば、さほど問題点はない。 俺は平均89点という予想外な結果だった。内心、少し嬉しいものだ。 前を見ると、健治が壊れた玩具のように変な声を発している。徐々に立ち直りつつあった失恋のショック…しかし、テスト用紙が返されてからは…このパターンからだと、昼休みには早退しているだろう。まぁいつも通りである。 今は四時間目で、本来英語の授業なのだが、珍しく自習となっている。 「お~い健治!!見せな!!」 強気な健治への言葉…美々だ 美々は健治が握り締めていたテスト用紙を奪うと、真剣な顔つきで点数を確認する。 「えっとぉ…これは勝ったな…つー事でジュース一本奢ってよね」 「勝っただと…じゃあ美々!!お前は?」 美々は勝ち誇った顔で自らのテスト用紙を差し出す。 「ん…あまり点数かわんねぇじゃねぇか…これで勝った言えねぇだろ…」 「いやっ…見た目はお前と変わりはないけどね、一つひとつは勝ってる!!よって私の勝ちよ」 またよくわからない口喧嘩が始まった。 今更だが、テスト期間になると美々と健治は喧嘩腰になる。毎回、五月蠅くなるのでした。点数は…低レベルな争いで、あまり2人の差はない。 「ねぇ!!カイも私の勝ちだと思うでしょ!!実際に健治より点数多いし…」 「何言ってんだよ!!あんまお前と俺の点数に変わりはねぇだろが!!ムキになんじゃねぇよ!!なぁカイ!!」 何度も言うが、2人に学力の差はあまりなく、馬鹿馬鹿しい子供のような喧嘩である。それと健治こそムキになっている。 「……あのさぁ、千葉健治くんと朝倉美々さん…その点数で勝ち負けを決めたりするのって…悲しくないの?」 2人は眉間に皺を寄せて、俺を睨む…2人の視線が俺を攻撃する。 …逃げたい…少し言い過ぎた。 今気付いたが、時計の針は授業終了を示していた。 昼休みになり、皆は教室から出ていく…しかし俺は動けなかった。いつもながら俺は2人の面倒を見ていた。 そんな時である。 「岳羽!!ちょっと来て!!呼んでるよ!!」 クラスメイトの声…廊下の方を見ると綾が居た。 正直助かった。 俺は逃げるように教室を出た。  
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!