夏の女の子

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【譜面】 綾は世話焼きだ 健治と美々のくだらない話の後に、綾に呼ばれたのだが… いつも綾は俺を驚かせる。 渡されたカセットテープと楽譜の書かれた譜面 「これ…聴いてみてくれないかな?できれば、見直してくれない?」 綾は吹奏楽部が本命だが、軽音楽部を掛け持ちである。 これで二回目である。ある日、第二音楽室に綾が居た。綾はアコースティックギターを片手に、譜面と戦っていたのである。俺がなんとなく教えてあげたのが、そのまま曲の一部となってしまった。 その日から、度々俺に質問してくるようになった。 譜面自体を俺に預けたのは、一年の時の文化祭以来である。 俺は正直、譜面などを見るのが好きだ…だからこの仕事を引き受ける。 譜面をざっと見ると、緩やかなバラード曲… 「岳羽くん!!お願いね!!頼りにしてるから!!」 綾は自らの用事を話すと、焦った様子で廊下を走って行った。恐らく購買目当てだろう。 俺は朝にコンビニで買ってきた昼飯を持つと、第二音楽室へ向かった。 ー… 第二音楽室は仮の軽音楽部の部室である。 部屋に入ると、疲れた様子の弘樹が居た。 こいつはC組、鈴木弘樹 軽音楽部のベース担当である。よく健治と馬鹿している仲間である。高校入学時に花音で知り合った奴で、穏やかな性格でほのぼのキャラである。 「あっ…岳羽ぁ!!」 弘樹はなぜか両手にいくつものパンを抱えていた。 どうせ購買部という戦場でパンを買うのに苦戦したのだろう。 「弘樹ぃ…大丈夫かお前…つーかパン買い過ぎじゃねぇ?」 一人で食べるには無理な量…そのパンを持った弘樹の姿は、まるでパシり…である。 「ねぇ岳羽ぁ…健治知らない?コレ頼まれたんだけど…」 弘樹の右手にはピザトーストとバナナロール…本当にパシりみたいだ。 「…健治なら、教室で美々とテストの点数で言い争ってっぞ…お前も大変だなぁ」 「いやぁ…喜んでくれてるから、俺はいいんだぁ…じゃあね岳羽ぁ」 弘樹はパンをまた大事そうに抱えると、小走りで部屋を出て行った。 …あいつは、人が良すぎる。 弘樹の幸せを祈り、そして俺はため息を吐いた。 コンビニ袋からサンドイッチを取り出し、口に含みながらも、譜面との睨み合いを始めた。  
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