4人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
【譜面】
綾は世話焼きだ
健治と美々のくだらない話の後に、綾に呼ばれたのだが…
いつも綾は俺を驚かせる。
渡されたカセットテープと楽譜の書かれた譜面
「これ…聴いてみてくれないかな?できれば、見直してくれない?」
綾は吹奏楽部が本命だが、軽音楽部を掛け持ちである。
これで二回目である。ある日、第二音楽室に綾が居た。綾はアコースティックギターを片手に、譜面と戦っていたのである。俺がなんとなく教えてあげたのが、そのまま曲の一部となってしまった。
その日から、度々俺に質問してくるようになった。
譜面自体を俺に預けたのは、一年の時の文化祭以来である。
俺は正直、譜面などを見るのが好きだ…だからこの仕事を引き受ける。
譜面をざっと見ると、緩やかなバラード曲…
「岳羽くん!!お願いね!!頼りにしてるから!!」
綾は自らの用事を話すと、焦った様子で廊下を走って行った。恐らく購買目当てだろう。
俺は朝にコンビニで買ってきた昼飯を持つと、第二音楽室へ向かった。
ー…
第二音楽室は仮の軽音楽部の部室である。
部屋に入ると、疲れた様子の弘樹が居た。
こいつはC組、鈴木弘樹
軽音楽部のベース担当である。よく健治と馬鹿している仲間である。高校入学時に花音で知り合った奴で、穏やかな性格でほのぼのキャラである。
「あっ…岳羽ぁ!!」
弘樹はなぜか両手にいくつものパンを抱えていた。
どうせ購買部という戦場でパンを買うのに苦戦したのだろう。
「弘樹ぃ…大丈夫かお前…つーかパン買い過ぎじゃねぇ?」
一人で食べるには無理な量…そのパンを持った弘樹の姿は、まるでパシり…である。
「ねぇ岳羽ぁ…健治知らない?コレ頼まれたんだけど…」
弘樹の右手にはピザトーストとバナナロール…本当にパシりみたいだ。
「…健治なら、教室で美々とテストの点数で言い争ってっぞ…お前も大変だなぁ」
「いやぁ…喜んでくれてるから、俺はいいんだぁ…じゃあね岳羽ぁ」
弘樹はパンをまた大事そうに抱えると、小走りで部屋を出て行った。
…あいつは、人が良すぎる。
弘樹の幸せを祈り、そして俺はため息を吐いた。
コンビニ袋からサンドイッチを取り出し、口に含みながらも、譜面との睨み合いを始めた。
最初のコメントを投稿しよう!