夏の女の子

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【陽光】 予定通り健治は早退した。 弘樹…どうなったかは知らない 授業中の暇潰し相手が居ないことは厳しい。今日の午後の授業はあまり重要でなかった為、俺は授業を休んだ。 あれからずっと第二音楽室…気になる所をメモにとったり、別なメロディーを作ってみたり、自分の存在意義を考えてみたり…くだらない時間を送っていた。 一つ俺にとって発見があった 譜面の端っこに書いてあったのだが… 「絆」 作詞:深澤恋菜 作曲:佐藤綾 作曲って!!綾は人に任せてんのに…まぁ作曲者は別にいいとして… 作詞のことだ。 「ふかざわ…何だろ?こい…な?違うな、れん…な?…ん!?まさか!!…れな!!」 そうだ…この前、綾が言ってた友達…レナだ!! じゃあ…歌ってたのはこの人だろうか? 俺が妙な考えをまとめていると…授業終了のチャイムが聞こえてくる。 俺は楽譜を見ながらも、ピアノの椅子に座り、鍵盤のカバーを開く ゆっくりとピアノに触れる俺の手 楽譜の通りに弾いて、おかしい所を探す。 調子にのって、俺は力強く…弾みをつけて弾く そんな時である。 ゆっくりと教室のドアが開く …突然の人の来訪に、俺は驚きを隠せず、間違って違う音階を鳴らす。 ドアが開き一人の女の子が居た 肩まで伸した髪 凛とした綺麗な顔つき 透き通った瞳 なんだろう…初めて会った気がしない。 女の子は目を逸して、どうしたらいいか戸惑っている。 「あの…君は?」 俺は沈黙を壊す。女の子は少し驚いた様子でこちらを見る。何か安心したような顔で喋り始めた。 「あの…隣りの音楽室に来たら、この教室からピアノがまた聞こえてね!!気になって…」 やはりどこかで会った気がする。俺は自らの記憶の中から彼女を探す。 「…で、何を弾いてたの?」 俺は鍵盤のカバーを戻して、おもむろに譜面を彼女に渡す。 「えっとぉ…「絆」って曲」 「えっ!!!…「絆」…」 彼女はまた驚いて、欠かさず譜面を見る。その後、彼女は笑みを浮かべながら俺を見る。 「あの…は、初めまして!!私は深澤恋菜って言います。宜しく岳羽凱くん!!」 「えっ!!……」 彼女はニッコリと笑顔になった。その笑顔に圧倒されながら、俺は気がついた。 目の前に居るのはあの深澤恋菜 そして… 屋上の女の子だという事  
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