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【奏愛】
…数年前である。
中学にあがって、数週間…
この時に、健治と美々とは友達になっていた。
1学年は3クラスあり、俺はB組であった。クラスは42人でいろんな個性派な人たちが居た。
ただ…
俺は気にしていたことがある。
数週間、中学校生活をしていたが…42人のクラスの筈が、41人である。
クラスの仲間は、誰も言わない…知らないのか…
廊下側の一番後ろの席…
誰も座っていない机…
その一週間後、どうしても気になり、俺は思い切って先生に聞いてみた。
「ああ…、奏愛(カナエ)ちゃんね…」
「カナエ?…なんで学校に来ないんですか?」
「奏愛ちゃんは入院しているのよ…病気がちでねぇ…」
「へぇ…そうなんですか」
「それにしても…有り難うね岳羽くん。気にしてくれて、体調が良ければ、学校に来るはずなんだけど…」
よくわからないまま、感謝までされた。
でも、本当に驚いたのは次であった。
…放課後
ホームルームが終わり、皆が帰っていく…俺も帰る準備をしていた時、担任に〝岳羽くん!!ちょっと〟と呼ばれたのである。
「岳羽くん。奏愛ちゃんに会ってみない?」
「えっ?」
いきなり何を言い出すかと思えば、先生は笑いながら奏愛という見ず知らずの女の子…一応同じクラス…その子に会えと言っている。
言われた直後、自分でもわからなかった。おれは何がしたいのか、会ってどうしたらいいのか…
困惑の表情の俺に、先生は話を続けた。
「あのね、貴方のこと…奏愛ちゃんのお母さんに話したら、喜んでいてね。岳羽くんが良ければ、今度病院にでも…奏愛ちゃんの話相手でもしてあげてほしいんだって…」
「えっとぉ…その…」
困る俺に先生はまた言う。
「岳羽くんがいい時でいいから、ハイ!!これが病院の住所と連絡先…」
押しつけるようにメモを俺にやり、また先生は〝わざわざ有り難うね〟と俺に感謝の言葉を送った。
……
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