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【病院】 自分でも知らない間に病院に来ていた。 行け!!と言われた訳でもないが、来なきゃいけない気がしたんだ。 でも本音は、先生にあんな態度をされた事…あちらのお母さんの事…行かない訳にはならなかった。 今日は祝日で、天気も良かった。 街のはずれにある市の病院 自動ドアを潜ると、エントランス…待合室とも言うべきか、沢山の人たちが居た。 その中で一人、こちらに歩いて来る女性 白いカーデを羽織った優しそうな人 俺の2歩手前で止まり、軽くお辞儀をした。 「貴方が岳羽くんね…」 恐らくこないだ話に出てきたあちらのお母さんだろう。 というか、なぜこの人がすぐ俺がわかったのかは、俺の恰好が学生服だからだ。 俺は事前に先生に連絡し、確認した。しかも先生も来るらしい。 「は、初めまして…」 その人を目前に、俺はどうしたらいいか…言葉を探した。 「そんなに緊張しちゃって…岳羽くん」 後ろから聞慣れはじめた声… タイミングよく先生が来てくれた。 先生とあの人は少し挨拶やら話をしたあと、俺に話を向けてきた。 「本当に有り難うね…どんな理由であろうと、此所に来てくれたもの…奏愛も喜ぶわよ」 奏愛の母は俺の手を取り、感謝の言葉を俺に与えた。 「いえ、俺はまだその子に何もしていませんから…」 奏愛の母は〝あら?〟と声を漏らし、また俺に微笑みかける。 「岳羽くん。勝手だけど、先生と奏愛ちゃんのお母さんは話があるから…岳羽くんは奏愛ちゃんに会ってあげて!」 「えっ…俺一人ですか?」 また困る俺に奏愛の母は微笑みかけ、 「大丈夫、奏愛にも貴方の事は話してあるから…三階の105号室だから、お願いね」 そして先生は〝ゴメンね〟と俺に謝ると、奏愛の母と歩いていった。 取り残されたのは、この俺と…105号室という言葉だった。  
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