夏の俺

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【旋律】 夏休みが終わり、はや二日目 今日は昨日と違い、風もなく日差が厳しい。 それにより授業がだるい …非常にだるい ……たるい 古文なんて消え去ってしまえ!!お前の頭の毛も消え去ってしまえ!! と…朧気に黒板と教科の先生を見て、くだらない想像をしていた俺 もうすぐ9月だってのに眩い太陽は、カーテンという防御膜を嘲笑うように俺達を苦しめる。 二時間目が終わって、健治がダルそうに話しかけてきた。 「カイ…次…休まね…」 「…おし、行くぞ健治…」 休む=サボタージュである。この暑さから逃げるためであるから、場所はクーラー設置という条件である。 「健治…どこだよ…」 「んー…保健室は…いやぁまずいしなぁ…んー…どこが良いか…」 「…健治…お前の部室は?」 「そっか!!ナイスだカイ!!」 部室ってのは、軽音楽部が勝手に使っている部屋である。 健治は軽音楽部なんだが、役割は音響機械の調整や操作…って聞いてる。健治曰く、放送委員の仕事の途中で軽音楽部の人たちに目をつけられたらしい…最近は音響だけでなく、ドラムに挑戦している健治だが、うまくいかないのが現状である。 第二音楽室ー… 部室と言っても軽音楽部が勝手に使っているのだ。 数少ない空調設備がある部屋 第二音楽室の後方には、ヴァイオリンから打楽器など沢山の楽器が保管されている。 「ああ…生き返るぅ…」 健治はパイプ椅子を五つ並べて、横になって茹れて嘆いている。 俺は無言のまま、グランドピアノに触れる。 自分でもわからない衝動に駆られ、おもむろに椅子に座り鍵盤のカバーを開くと、人差し指で一つの音階を鳴らす。 「弾かねぇの?」 「今は授業中だろ…ってか、人前では弾かねぇから俺」 俺は昔はコンクールなどで入賞したりした事があった。でも中学に上る時…そこからピアノを弾くのをやめた。 …でも体が覚えている。 俺の手が鍵盤を探している。 近頃は人目を盗んで弾いている。 人前が苦手という訳ではない 問題はないのだが… それは…俺が弱いだけの話  
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