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8年ぶりになる。
5年前に高校を卒業してすぐに上京した。
夢に向かってがむしゃらだった。
頑張っても結果が出ず、諦めを付けるために実家に帰ったら、母が中学校は廃校になったことを教えてくれた。
校舎の中に入る。
所々はげた壁、ワックスで黄色っぽくなった床、学生時代に名前を掘った掲示板。
その全てが懐かしく思えて、自分が成長したことを実感した。
「もう8年もたったのか…」
たった8年、だけど8年の時間の重みはいま形となって目の前に現れている。
歩いていると一つの教室が見えた。
「3年1組」
昔毎日のように通っていた教室は、今はひっそりと日の光を浴びていた。
昔座っていた椅子に座ると思い出す。
…………
「俺は将来ミュージシャンになる!」
「お前がなれんのかよ!」
「そう言うお前はどうなんだよ!」
…………
いつも夢について友人と語っていた昔。いつ頃だろう?夢を諦め出したのは。
まだ走れるんじゃないかな?そう思える気がする。
青年は教卓に向かい会うとユックリと頭を下げた。
「お世話になりました。」
青年は学校を後にした。
その表情にはどこか希望に満ちていた。
もう日が傾いていた。
夕暮れだった。
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