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私は膝丈のワンピースを着て、素足にスニーカーをつっかけて街角に立っていた。
家に帰ろうとしている。
と、雨が降り始めた。傘は持っていない。
早く帰ろうと足を速める。家まではすぐのはずだ。
すると横断歩道の直前に蚊柱がたっていた。
広がっているのでよけられない。嫌だが突っ切るしかない。
雨に濡れたまま小さい虫のただ中に突っ込むと、顔や体にくっついてきてますます不愉快だった。
早く帰りたい。その一心で走り出す。
雨が強くなってきた……雨と一緒に何かが落ちて、
虫だ!
爪の先ほどの羽虫が雨と一緒に降ってきて、髪に、体に、張り付いてゆく。
気持ち悪い…!
私は片腕を上げて顔をかばいながら走る。濡れた素肌に細かいものが張り付く感触…
虫の雨はどんどん強まり、道路にも雪のように虫が積もってゆく。
早く家に、真っ先にシャワーを浴びたい!
そんな気持ちとは裏腹に、近いはずの家に一向にたどり着かない…
道路には車もなく、半ば目をつぶったままで私は走りつづける。
流れる雨と一緒に口に入ってくる虫がじゃりじゃりと気持ち悪くて懸命に唾を吐き出す。
まだつかない…
ひたすら走る…
この通りには見覚えが…もうすぐ、きっともうすぐ…
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