059 友田 礼 トモダ ライ

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とはいえ、やはり、次期広報部部長だろう、と囁かれる二年の候補が既にいた。 広報部部長。 それは、鷹岡学園の一生徒でありながら、全生徒の情報をほぼ一括する役職。 そう簡単になれるものじゃない。 その部長候補の先輩は、名前を兼田といった。 兼田先輩は、人との駆け引きの上手い先輩だった。 人脈もそれなりに広いようだし、その巧みな話術で広報部の中でも相当"できる"先輩だった。 "あんなこと"が無かったら、きっと、兼田先輩が、そのまま広報部部長になっていただろう。 いくら俺がなりたいと思っても。 †††† 「あの日、俺は、洋介に呼ばれた。」 友田は思い出すようにそう言いはじめた。 あの日というのは、きっと、あの出来事が起きた日のことだろう。 洋介とは兼田先輩のことだ。 確か兼田先輩の下の名前は洋介だった。 でも、まだこの友田と、兼田先輩の繋がりが見えない。 先輩なのに、洋介と呼ぶあたりからして相当仲がいいのだろうか。 (兼田先輩に呼ばれた?何故?) そう思って探るように友田を見る。 一向に友田と兼田先輩との関係を理解してなさそうな顔をする俺を見て、友田はその続きも話し始めた。 「洋介は、もう確実に部長になる筈だった。 お前も知ってるだろ?」 「………あぁ。でも、」 「そう。でも、なれなかった。 代わりに、他に立候補していた唯一の立候補者だったお前が部長になった。」 そう。 みんな、『どうせ兼田がなる』という考えから、立候補なんていなかった。 それでも僅かな望みにかけて、立候補していた俺は、見事部長に。 まさかの一年が部長という事態に、先輩達は不服だっただろう。 だから、俺は、部長として恥じないよう、結果をどんどん出した。 その結果、認められるようになっていったわけだが………。
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