059 友田 礼 トモダ ライ

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「俺と洋介は、親友みたいなもんだ。それ以上でも、それ以下でもない。 お互い、中庭に行く習慣があって、進級してすぐそこで知り合った。」 そう話す友田の顔は、懐かしそうな顔。 しかし、それはすぐに険しい顔に変わり、京哉を冷ややかに見た。 「あの日、呼ばれたのも中庭だった。 洋介はいつものように、ベンチに座って、俺が来るのを待っていたよ。 俺が行ったところからは、背中しか見えなかったけど、確かに居た。 でも、俺は洋介の居るところまで、行くことはできなかった。 何故なのか。 わかるよね、篠田なら。」 (え、こいつが、あの………) お前なのか? ……あの日、レイプされたっていう…新入生は…… 急に出てきたその推測に、思わず喉が震える。 そう。 兼田先輩は、多くは明かされなかったが、 とある事件で学園側から停学処分を一週間受け、その問題により、次期広報部部長の座を下ろされた。 部長になってから、どうにかして知り得た情報では、新入生を無理矢理………。 その被害者の精神的ダメージを考慮して、名前はどこにもなかったが、 生徒内で、解決してしまうような出来事で済んだら、こんな大事にはならなかっただろうに、 気絶した被害者生徒及び、側にいた兼田先輩を、偶然教師が発見したことにより、事態は悪化。 学園側も、停学処分を言い渡す他、なかったという訳だ。 ………でも、待てよ? 今友田は、兼田先輩の居たところまで行けなかっただとか言っていた。 しかも、少しも兼田先輩を恨んでいるようではない。 寧ろ、自分のせいで兼田先輩が部長になれなかったことを、何故か悔やんでいるようだ。 それに、こいつは俺に、 「俺はお前に的(ターゲット)にされた本人だ」と言った。 的(ターゲット)? それじゃあまるで、俺が──── 「とぼけるなっ!!!! お前が俺をヤッた。 お前は洋介を嵌めた。 そうだろうに、なぜとぼける! 俺は、洋介のところに着く前に、後ろから思いっきり殴られた。 そして気絶していた俺を、わざと教師の目にとまりやすい、職員室横の印刷室に運び、洋介をあの場に呼び寄せた! 洋介は、ありもしない罪で停学処分! 俺は、こそこそと教師から、ありもしなかった事件の被害者扱い! 全部、お前がやったくせに。 部長の座に着くために!」 友田はそう言って、俺の足を蹴り飛ばした。 右足に響く痛み。
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