060 疑惑

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~翔視点~ …………おかしい。 篠田先輩の姿が、体育祭の締めにあたるリレーになっても見当たらない。 「なぁ、京哉見なかった?」 「篠田先輩?」 「京哉が来ないんだ、リレー始まるってのに。 翔、見かけたらよろしく」 「……うん」 達也にそう言われて、校庭を見渡したけど、あの目立つ銀髪はどこにもない。 そうこうしているうちに、トップバッターが走り始めた。 (確か、あの騎馬戦の件で話した時も、篠田先輩がいないとか言ってたよね……) 仮に、あの時から篠田先輩がいないとしたら、何があったんだろうか。 ふと、盛り上がっているグラウンドの中心を見る。 そこには待機しているリレー参加者がいるわけだが、達也を含めた達也の付近の生徒たちがキョロキョロと周りを見渡していた。 篠田先輩を探しているのだろう。 達也と篠田先輩は同じクラスだから必然的に同じチームだ。 よく見ると、少し離れたところでも達也と同じく探しているような頭が。 「………東雲先輩?」 深くは知らないが、篠田先輩が最近付き合いだしたっていう背の高い体育委員長だっけ。 最初、篠田先輩に体育委員の仕事任せた時は、あの人と気まずそうな感じみたいだったけど、 解決して、しかも付き合いだしただなんて、予想外だったなぁ… 達也が嬉しそうにしていたから、本当によかった。 ……って、そんなことは今どーでもよくてっ、 篠田先輩どこに居るんだ? 「高瀬様っ!!!」 再び篠田先輩を捜そうと目線を変えた時に、いきなり後ろから声を掛けられる。 呼び方からして、一般生徒だろう。 振り向けば、その人は血相を変えて走ってきたようで、肩を上下させながら何とかいる。 よく見れば二年生だ。 相手の様子からして、ただごとではない。 「どうしましたっ?」 「あのっ、………大変なんです!」 「何がですかっ?」 「シンがっ、あ、えっと……友達なんですけど、なんかっ、集団でリンチされたようでっ、それもっ、沢山っ!」 早口でいまいち言っていることがワケわからないが、聞き捨てならない単語に翔は眉をひそめた。 「………リンチ? ────どこですか。」 そう言った翔の顔は、険しかった。
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