060 疑惑

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その子に案内されたのは保健室。 今は保険医はグラウンドの救護テントにいる為、無人なのだが、とりあえずそこに運んだらしい。 そこには、変に先生たちに伝えて、事を大きくしたくない気持ちが見えた。 ───ガラッ 扉を開ければ、知らない生徒だが、一生懸命に傷の手当てをしているのが一人と、 痛そうな表情を浮かべながらベッドに横たわる生徒が4人。 「痛い痛い痛い痛い!!! もうちょっと労ってよ、お願いだから!」 「しょーがないだろ!消毒だ消毒!」 「ちょっ、あ!も、あ゙ー!!! そこ一番酷い痣なんだから!叩かないでよ!」 「………くっ、痛ぇ」 「あっつ、めっちゃ熱持ってるよこの瘤」 なんだかもう、誰がどう喋ってるのかがよくわからない状況。 痣とか少しの出血は見えるが、案外本人は、精神的には元気そうだ。 「何があったか、話してくれますか?」 会長モードに切り替わった翔は、そう言って、4人に近づいた。 4人とも、キョトンとした顔で翔を見る。 「あれ、会長様だ!」 「わっ!会長様だ!!」 各々驚いたように声をあげる。 が、驚き過ぎたのか、体を急に動かした為、痛そうな表情を同時に作った。 「俺が呼んできたっ!」 驚く怪我人達に向かって、心配そうにそう言うのは、翔をここまで連れてきた子。 すると、怪我人の中の一人が割と大きい声で叫んだ。 「大事にしたくないって言ったじゃん!!!」 「で、でも……だって、あいつがやったんでしょっ?!!」 慌てたように、それでも反論する。 「だーから、仕方ないんだってば だって、……」 わーわーわーわー話を勝手に始めていく彼らを見て、翔は無意識のうちに、眉間に皺を寄せた。 その様子を見ていたのが一人居たらしく、慌てて止めに入る。 「ちょっ、会長様がいるでしょっ!」 その一言で、騒いでいたのも一斉に翔を見る。 満面の作り笑顔に、その場の全員が冷や汗をかいたのは言うまでもない。
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