060 疑惑

4/10
3555人が本棚に入れています
本棚に追加
/235ページ
「で、何があったんですか?」 静かになったところで、翔は再びそう聞いた。 しかし、何人かが口を開いたりするも結局何も話しださない。 その中、意思の強そうな一人がようやく口を開いた。 「会長様を僕の友達が呼び出しといて、悪いですけど、これは僕らが当然受けるべき傷なんで、すいません。 目を瞑って下さい。」 「シン!」 黙ってられないように、翔をここまで連れてきた奴が口を挟む。 「ダイキは黙ってて」 「黙ってられるかよっ」 「黙って!」 「やだ!」 「黙れ」 「やだ」 「黙っ「いい加減にして下さい!!!」 耐えきれず翔が大声を上げた。 一般生徒の前では、普段冷静に微笑むくらいしかしない翔が大声を出したことに、動揺を隠せない六人。 達也のおかげもあって、最近は少しずつ、柔らかくなった方だったが。 「話す、話さない。じゃないんです。 話してください。 生徒会長として、命令です、えーっと……名前は?」 その威圧感に近いものに、従わざるをえない。 「……………阿賀野 新之助です」 ───そう。 翔は知らないが、 ここにいる怪我人のうちの三人は、京哉といつきとでパーティーと称して集まったあの三人だった。 加藤 俊吾 宮田 朗 阿賀野 新之助 殴られたのか、蹴られたのか。 定かではないが、各々、切り傷や痣が目立つ。 翔はこの生徒たちが誰なのかは知らない。 ただ、───目の前でこんな傷を負った生徒が居るのに、ただただ黙って、話してくれるのを待とうとは思えなかった。 事情は知らないが、こんなことが生徒の中でこれからも起こり続けるなんてことは、あってはならない。 そんな思いが翔の中にはあった。 「じゃあ代表して、何があったか話してくれますか?」 「………」 しかし、翔が問いかけても、その意思の強い目が、戸惑うように保健室の隅に逸らされただけだった。
/235ページ

最初のコメントを投稿しよう!