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~紗矢視点~
扉を開けると、手当てを終えて何か話をしていたらしい彼らがいた。
数は六人。
四人はあちらこちらに湿布や絆創膏をしていて、二人はきっと手当てをした奴なのだろう。
体操着の色からして、同い年の二年とみた。
いきなり入ってきた俺らに全ての視線は向けられていて、驚いた顔つきをしている。
「いきなりごめんねぇ?」
その場の雰囲気とは程遠い、相変わらず気の抜けた喋り方で隣にいた秋が第一声をかけた。
すると、頬に湿布を貼っている奴が口を開く。
「……何の用ですか、」
すかさず秋は答える。
「君たちに聞きたいんだけどぉ、京ちゃんにー恨まれるようなことしたの?」
あまりにも単刀直入すぎる聞き様に俺は思わず秋を見た。
秋は言葉ではわからないが、その表情はどこか、怒っているようにも見える。
秋が真剣な証拠だ。
急いでるのもあって、直感通りに切り出す秋。
そして、うろたえるかと思っていたが、彼らは少し悲しい表情を見せながらも、しっかりと俺らから目を離さない。
「確か、広報部の……」
「あ、……確か、副部長さん。」
流石に俺までは知らなくとも、秋くらいならわかるようだ。
「なるほど。だから、僕たちに事情を聞きに来たってわけか。」
半ば諦めたような口調で話すのは、黒髪の男。
そのまま淡々と話を始める。
「生徒会長にも話したけど、俺らは東雲いつきのセフレみたいなものだった。
篠田からこうして暴力を受けるのは当たり前さ。」
東雲の……!?
すぐに思い浮かんだのは、京哉に頼まれた、東雲いつきの過去。
たしか、沢山そういうのが居たことは、俺が調べたから京哉も把握しているはず。
…………有り得なくはない。
誰だって、自分の恋人の周りの五月蝿い蠅には、嫌悪する。
だが、動機がそれでも、なぜこんなにだだ漏れの状態で犯行をした?
京哉なら、もっと、自分だとわからないようにするはずだ。
こいつらは完全に京哉がやったと信じているが(まぁ、立場上当たり前の現象だが。)、
きっとこれは………
「完っ全に、仕組まれてるねぇ、」
秋はそういうと、彼らに近づいた。
(──何をする気だ?)
「京ちゃんへの罪悪感は、わからなくもないけどねぇ、
こんな風にわかりやすく、京ちゃんは君たちを襲ったりしない。
君たちが手を出していた男が本命として好きになった男は、
こんなこと、人にやらせるようなことはしないよ、
よぉく、覚えとき。」
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