061 最後の1ピース

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【数十分前】 ~京哉視点~ どれくらい、この縄を取ろうと動かし続けただろうか。 己の手足は赤く擦り切れているに違いない。 ジンジンと痛む。 (まったく……どこでこんな頑丈な結び方覚えてきたんだよ…‥) 閉鎖的な空間に長いこと置かれると、時間の感覚がわからなくなってきた。 体育祭はもう終わったのだろうか。 俺がいないことに気づかないわけないだろう。 ということは、‥…秋たちが捜してるか。 そんなことをぐるぐると考えるしかない現状にも飽きた。 それに、深く考えるのはやめた。 きっと一方的に兼田先輩の件で俺に鬱憤が溜まっていた礼が、俺がいつきと付き合い始めた噂が流れ始めたのがキッカケで、こんなことをしようと考えたのだろう。 それしか考えられない。 俺をこんなところに括り付けてるのも、大方、その間にいつきの関係者をボコボコにして、俺のせいにでもする為だろうな。 「はぁ…………‥」 大きくため息をつく。 俺のせいで関係ない奴らが被害にあったってわけか。 いや、俺も被害者だけれども。 まだ、会長の時みたく、強姦まがいなことをしないからマシだ。 礼は自分がそれをされたことがあるからこそ、そんなことは絶対にしないと言い切れる。 人数が人数だしね。 だけど、きっと… 「相当痛めつけられてそーだな…‥」 ここを出れて物事が解決できたらまず、巻き込んだ奴らに頭下げなきゃ。 それに………‥ いつきが、 誰よりも心配しているだろう。 自惚れかもしれないけど、事実、そうだろう。 早く一度でいいから顔を合わせたい。 予定では体育祭が終わったら……なんて話してたのにな。 嘘みたいに事件に巻き込まれてる自分がいる。 それに、きっと今、いつきは礼によって色んな誤解をしていることだろう。 いつきの元セフレを俺が指示してボコしたなんて、礼の思惑通りに聞いたら、いつきは俺を今、どう思っていることだろうか。 考えただけで寒気がする。 それだけは恐怖。 それだけは無理。 それだけは勘弁。 全く関係のない事件の真犯人に仕立て上げられている自分が情けない。 もしかして、礼は教師にまで何か言うつもりなのだろうか。 最早、乾いた笑いしか出ない。 そうなったらお終いだ。 生徒会は俺を捨てるだろう。 広報部も同じだろ。 んで、達也は俺をさけずむ。 いつきは、俺を…‥
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