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「はぁっ、はぁっ、……ケホッ…‥」
息を整えながら先輩の言葉を聞く。
今のは完全に辛い体制だった。
思いっきり押し付けられた後頭部がジンジンする。
きっと礼に殴られたところと同じところを当てたのだろう。
それにむせるような感覚が、喉を何度も襲った。
しかし、それよりも、…‥
『どうせ恋愛対象として好かれないから』というような先輩の言葉が、頭に響く。
だから先輩は、伝えることもせず、寧ろ最後に一方的に思いを性的暴行を加えた。
彼曰わく、自分の思いを受け止めてくれない礼を見れば、自分は強引に関係を持ち続けることをするだろうから、『礼の為を思って』。
それでも、礼は先輩と仲良くいたいと思ってるのだろう。
その証拠に、礼が自ら、犯人だと思う俺を縛り付けて、礼の考えでは被害者な先輩をここに呼び寄せた。
でも、実際は、この男の勝手に自己完結させた思いから起きた、単なる食い違い。
あぁ、それに巻き込まれた俺は、完全に被害者だ。
「先輩はっ……‥ッ、
結局友田に、辛い体験をさせたじゃないですか!」
「一度だけね。」
「回数の問題じゃない!」
「そう?」
「なぜ、友田が絶対に思いを拒むと言い切れるんだ!」
思わず敬語がぬける。
それ位、気づけば珍しく感情的になっている自分がいた。
「なぜ?
そんなこと、わかりきってる。
彼の中の俺は、よく言えば、兄的な存在だろう。
だから、今こうして俺に執着をみせるのは、家出してった兄弟を取り戻そうとするようなものさ。」
「………っ、」
「あのね、俺だって男だ。
それに、相当暴力的な愛し方しかできない。
そんな俺が、唯一本当に気を許せた礼にだけは、こうして自分で長い間セーブかけてたんだ。
今更考え直そうとも、何かしようとも思わない。
これ以上無駄な話はしないよ?」
そう言うと、何も言い返せない俺を見て、今度こそ先輩は扉を開いた。
「じゃ、礼によろしく」
そう一言言うと、先輩は扉の向こうに消えた。
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