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‥……────
「あのー、」
「……?」
振り向けば、青みがかった黒髪の男。
ネクタイの色からして、一年か。
爽やかな短髪。
少し切れ長な目。
「あ、もしかして…お前もここで昼食食べる気だった?」
まるでタメに話すような口調で話しかけられて、思わず目を見開く。
ネクタイでわかるだろ普通。
「俺一応、先輩だったりするんだけど?」
そう言うと、彼は、じっと俺のネクタイを見る。
「知ってるよ、2年だろ?」
知っててこの口の利き方!!?
思わず眉をよせる。
「俺、たかが1つや2つの年の差に、敬語とかそーいうの、要らないって考え方だから。」
さもあたり前のように言うそいつは、きっと俺が、少なからず生徒に一線置かれる広報部の人間だということを知らないのだろう。
「…お前、……名前は?」
「友田 礼。」
「ライ?」
「そう。礼(ライ)。あんたは?」
年下に『あんた』呼ばわりされて少しイラッとくる。
が、目の前には嫌になるどころか、見ているこっちが笑顔になるような純粋な表情をした礼の顔。
ため息をつく。
「兼田 洋介。」
名前を仕方なく言えば、今度は笑顔で右手を差し出す礼。
「よろしく、洋介。」
(──呼び捨て?)
握手を求めてくる。
「………よろしく…‥」
妙な心持ちだ。
よく物語の主人公になりやすい、純粋で馬鹿でまっすぐな奴とは違うが。
彼のその瞳に淀みはない。
それでいて、どこか意志の強そうな光が宿っていた。
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