062 絆?

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~紗矢視点~ 「うげっ、」 寮の地図をじっと見れば、いくつか怪しい場所はある。 給湯室、地下室、緊急時非難場所、立ち入り禁止の屋上、用具室‥…………。 でも地下室ってのが有力そうだ。 問題はそこへの行き方。 地下室とは名ばかりで、そこに行くには先ほど紗矢が居た、 ──つまり、兼田先輩と一緒にエレベーターに乗った階の廊下から行く必要があった。 一階と上の階と、元々二つルートがあったらしいが、地下室を使わなくなってから一階をリフォームしたおかげで、一階からの階段は封鎖されたらしい。 なんでも、緊急時に避難できるように、二つ階段を設置していたとか。 (──うん、間違いない。) 先輩も居たし、他も怪しいけど、取り敢えず一番部屋数のある地下室が有力だ。 寮の管理室に図面を返すと、紗矢は元来た道を走った。 こんなに広報部として、色々動いたのはいつぶりだろう。 京哉には悪いが、どこか、うきうきした気持ちも混じっている自分がいる。 元々、こういうことが好きで入った広報部。 (やっと仕事ができる。) 先程降りたばかりのエレベーターは、やはり誰にも使われることなく一階に停止していた為、すぐに乗れた。 急いで上がると、軽く覚えていた地図通りに、その階の奥を目指した。 "避難階段"と赤字で書かれた看板の下には白い大きめな扉。 それを開ければ、案の定、階段が続いている。 明かりはないが、いくつかある窓のお陰でそれほど暗くもない。 ただ、なんとなく雰囲気が怖い。 色々と想像してしまうと、恐ろしさが増すような気がして、とりあえず勢いよく下りていけば、そのうちに窓がなくなった。 地下に入ったのだろう。 そう考えたと同時に、階段が終わる。 地下室に着いたのだ。 「‥…………さてと。」 もしかしたら、礼も居るのかもしれない。 そう思った紗矢は、慎重に目の前に続く廊下を見た。 自分たちが普段使っている寮の上の階の廊下とさして変わりはない。 (一つ一つ開けてくしかない…か。) 気の遠くなるような作業にため息をつきながら、頭をかきむした。 そして顔を上げて廊下をもう一度しっかりと見る。 「(………あれ?)」 一部屋だけ、薄暗い廊下の中、うっすらと明かりが洩れているように見える。───いや、見違えなんかじゃない! いきなり見えた希望の光に、紗矢はその明かりの方へと駆けていった。
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