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物音一つしない。
が、取り敢えず思い切って玄関のドアを一気に開ける。
(─────……‥)
部屋の間取りも普段使っている上の階と同じらしい。
物こそないが、そこには小さな短い廊下と、その先には扉がある。
どれも見慣れた間取りだ。
紗矢は土足なのも構わず上がり、真っ先にリビングに続く扉を一気に開けた。
───ガチャッ
「──‥……篠田!!!!」
思わず軽く叫んでしまった。
そこには椅子に手足を括り付けられて下を向いた銀髪が居た。
紗矢の声に気づいたのか、驚いて顔をあげる京哉。
「……三谷!」
その目はどこか濡れた目をしていて、放つ色香に紗矢の足は一瞬止まる。
(なんつー顔してんだ、こいつ。)
きっと逃げようとして色々無理をしたのだろう。
京哉の額は少し汗ばんでいて、綺麗な銀髪は肌についている。
さらに、どこか欲情的なこの目がじっと、解放への期待を滲ませながら、紗矢を見ている。
開いた薄い唇は、自分の名前を今しがた呼んだ。
「……い、今、…解いてやるから」
「さんきゅ、」
我にかえり、慌てて京哉のもとへ行く。
縄は確かにとても頑丈だったが、なんとか外からなら外せそうだ。
「…流石、三谷。
秋も動いてるんだろ?」
右手、左手、と順に外していくと、京哉がそう話しかけてくる。
「あぁ、だけど、
……わからないことだらけだ。
俺たちはお前を信じてとにかく、変な情報は止めた」
「……変な情報?」
「お前が指示したわけじゃないだろ?
複数の生徒に暴行を加えるなんて。
今まであったのが、あの友田の仕業ってことは、前からマークしてたから知ってる。
けど、今日新たに四人出た。
しかも、……そのー、東雲の元セフレらしい。」
丁度そこまで話すと、縄が全て外れた。
京哉は自由になった手足を、振ったりして解す。
ふと見れば、鮮やかな赤い痕がついてしまっている。
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