062 絆?

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「被害者たちは『それなりの理由があるから』って、篠田がやったと思い込んでて、……んで、秋が否定してやった。 ま、はなから広める気はなかったみたいだけど。」 「………そうか。」 そう言ったきり、何かを考えるように黙り込む京哉。 大して驚いた様子でもないところからして、あらかじめ予測できていたのか……、礼に言われていたのか。 どっちにしろ、俺らにはわからないことだらけだ。 変な推測に拍車がかかる前に、本人の口から聞きたい。 紗矢は、椅子の前にあったソファーに座って手足をさすっている京哉の方に一歩踏み出す。 「なぁ、」 京哉は視線を俺に向ける。 「何でお前、こんな…‥」 言いたいことは伝わったようで、京哉は閉じたままだった口を開いた。 「俺が巻き込まれた理由は、……簡単に言えば、『とばっちりを受けただけ』ってとこかな。」 「は?とばっちり?」 「あぁ。移動しながら話してもいい? 友田のところに行く。」 「あ、あぁ…てか、足、そんなんで大丈夫なのか?」 京哉の片足の脹ら脛には、うっすらと痣になる手前の内出血の痕があるし、両足首には赤く擦り切れた痕がある。 部分的だが十分痛々しい。 体操着だから、隠す術がない。 「これくらい大丈夫だから。」 そう言って立ち上がる京哉。 やはり痛むのか、一瞬京哉の顔が歪んだのを紗矢は見逃さなかった。 それでも歩き出した京哉に、紗矢は短くため息を吐くと、京哉の横を歩いた。 「そういえば、兼田先輩と会ったんだ。篠田のところに来たんだろ?」 気になることは沢山あるが、部屋から出る前にこれだけは聞きたい。 「……来たよ。」 「その痣、先輩が?」 「いや、友田が。」 玄関手前で止まったまま交わされる会話。 京哉はふと周りを見渡した。 「そういえば……ここ、どこ?寮?」 今更ながらの質問に、思わず吹き出してしまったのは言うまでもない。 「あぁ、地下の階だよ」 「よく見つけたな」 「兼田先輩と会わなかったら多分、今頃、寮中走り回ってるよ」 「兼田先輩……か。」 そこからまた上に上がるまでの間、京哉の口から、京哉と兼田先輩との間に交わされた話が語られた。 兼田先輩の一方的な歪んだ愛を。 そして、それに翻弄され、事態を引き起こした礼の苦痛な叫びを。
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