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「そん時俺、気づいちゃったんだよ…‥そのー、
──…知り合いが居たから判ったんだけど……やられてたの、お前のセフレの奴らだった。」
「──え?」
「だから!、お前のセフレの奴らが篠田にぼっこぼこ…‥
基本、人の恋愛ごとに口出しすることないんだけど、
流石に、これは東雲に言わないと気が済まない。」
そう言うと、未だ頭の整理がつかず、唖然としているいつきの耳元で、礼は呟いた。
「他人を巻き込むんだったら、とっとと別れてくれ。
過去に好き放題やってた奴が、1人を大切にするなんて、できねぇんだよ。
例え、お前がそのつもりでも、相手はそうは思ってないらしいしな、」
そう言っていつきの肩を二回叩くと、礼は体をスッと離した。
「じゃっ、俺が言いたいのはそれだけだから。」
そう言うと、礼は校舎の方に向かって歩き出した。
一方のいつきは、今初めて話した奴に京とのことを言われた怒りよりも、──最後の言葉が頭の中を駆け巡っていた。
『例え、お前がそのつもりでも、相手はそうは思ってないらしいしな、』
「京、……‥」
小さないつきの呟きは、誰に届くこともなく、空気に吸い込まれた。
京は、何食わぬ顔をしておきながら、腹の底では過去、俺と関係のあった奴らを、そんなにも憎んでいたのか。
──いや、違う。
京が憎んでいるのは、『俺』だ。
今の俺じゃない。
好き放題やっていた過去の『俺』のことだ。
『俺』に対する怒りを、アイツらにぶつけるしかなかったんだ……‥
その場を動けず、ぐるぐると思考の闇に捕らわれそうになった、その時───
「ねぇっ!!」
肩に手を置かれる感覚と共に掛けられた言葉。
一瞬、何のことかとわからず、慌てて横を向けば、そこには走ってきた様子の、一条の姿があった。
「い、一条?」
「ねぇ、
‥…友田に会っちゃったぁ?」
間の抜けたしゃべり方だが、目が笑ってない。
『彼氏なんだから京ちゃんにしっかり言っといてねぇー』と、いつきに声掛けた時とは、全く違う顔つき。
「あ、あぁ…」
そう言うと、苦い顔をする秋。
「友田は、なんて言ってた?」
珍しく伸びない語尾。
普段おちゃらけているのが、真面目な口調だと、正直恐い。
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