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通話を終え、携帯をポケットにしまいながら、一条は友田の元にズカズカと歩いていく。
俺は慌ててそれを追いかけ、一条の肩に手を置き、歩みを止めさせた。
「俺に行かせて。」
一条を押しのけ目の前に行けば、友田はちょうど探していた紙を見つけたらしく、ファイリングされていた中の一枚を勢いよく切り離した。
「それ、何?」
見るところ、それは職員が生徒のデータを保管している書類のようだ。
ファイルをバンッと閉じると、元のところにしまいながら友田はため息をついた。
「君の恋人が俺にやったことが書いてある紙、だよ。」
皮肉気な口調で吐き捨てるようにそう言う友田。
「………え?」
「俺は篠田が部長になるために、アイツに…‥」
「部長になる為にぃ?」
友田が憎しみの籠もった顔をして、言いよどんでいると、そこで一条が聞き返した。
「やっぱり、兼田先輩のことが絡んでるんでしょ!」
強い口調で今度は俺を押しのけてそう言う一条。
「待て、兼田先輩って誰だよ、」
「兼田先輩が、広報部部長になるはずだったんだけど、そこで京ちゃんが運良く部長になったんだ。去年ね。」
「どうやって!?」
そういえば、前々から気になってはいたのだ。生徒会長の高瀬じゃあるまいし、一年で部長に就くことのできた京には、俺は心底驚いた。
今では京が部長でも、すっかり当たり前になっているが、一年が部長になるなんて異例過ぎる。
「兼田先輩が、理由はわかんないけど、停学処分を受けたんだ。
その時はみんな、兼田先輩が次期部長になると思ってたから二年は誰も立候補してなくて、
駄目もとで立候補していた京ちゃんが繰り上がりで部長になったの。」
一条がそう言うと、すかさず友田が一条の肩を掴んで喋り出した。
「あれは篠田が仕組んだんだ!
何もかも!!!
俺を利用して自分が成り上がるために!
『運』なんてもんじゃない!
お前らがイイヤツだと思ってる篠田は、腹の底から自己中心的な考え方しかできない、最悪な策士なんだよっ!!!
だから、アンタら第三者に、被害者の俺を止める権利なんてないっ!
あんな奴に、恋人何かがいる資格はないっ!!
あんな奴が、部長なんて名乗る資格はないっ!!!
なぁ、そうだろう!!!?」
ヒステリック気味に叫ぶ友田。
最初は罵ってやろうと思っていたが、あまりに悲痛なその姿に、言葉が出ない。
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