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~京哉視点~
誰にとったって、
『強姦された』
なんて、軽々と人に話せる内容じゃない。
ましてや、"男"が"男"にされただなんて。
わからないことがあると、仕切りに問いただす癖のある秋が、案の定しつこく俺に友田との一件を聞いてきた、が。
そんなの、……
そんなの、耐えられるはずがない。
すっかり力の抜けた友田は、俺の目の前で、座り込んだ。
しゃがんで友田と視線を合わせたところで、真実を話すために口を開く。
きっと友田は、第三者のいるこの状況で、自分が強姦された話などしてほしくないだろうが、仕方がない。
これを話さない限り、永遠に俺は友田の中で、加害者だ。
「まず、友田を気絶させたのは兼田先輩の友人らしい。
で、そのあと、……ワザと見つかりやすいあの場で、お前を犯したそうだ。」
「……?」
『ワザと』という言葉に首を傾げる友田。
「兼田先輩が話してくれた話によれば、その理由はこうだ。
まず、広報部部長には、正直なりたくなかったらしい。面倒に感じていた、と俺に言った。
で、何よりも………
兼田先輩はお前に恋愛感情を抱いていたらしい。」
わかりやすいくらいビクッと、肩を震わした友田。
その表情は固くこおばり、その目は、俺に何かを求めていた。
けれども俺は、それに気づかないふりをして続ける。
そうしないと、いつまで経っても喋りきりそうにない。
幸い、友田と俺のやりとりを、いつきも秋も、紗矢も黙って聞いているだけにしてくれているので、無駄な邪魔が入らずに話せそうだ。
「けど、兼田先輩は、自分でこう言っていた。
自分は利己的な人間だ。
自分に気持ちが向いていない人を無理やりねじ伏せることだって、簡単にやってしまうだろう。
けど礼は俺にとって、一度でも心を許せた唯一の友人だ。
だから俺は、礼を無理やり恋人なんて位置には付けさせない。
けれども同時に、俺は今まで通り、礼と生ぬるい友人関係を続けるなど無理。
手っ取り早く、
広報部部長の位置から降り、
礼と離れる口実を作れるのが、……無理やりワザとわかりやすいところで、お前を……犯すことだったと。
おまけに、お前を抱くこともできるしな。
流石に顔は合わせられなくて、目隠しさせたそうだ。」
その場の俺と紗矢以外が、ハッと息を呑むのがわかった。
紗矢にはここに来るまでに、話し終えていたから、冷静に友田を見ていた。
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