3555人が本棚に入れています
本棚に追加
/235ページ
「だろ?一条、」
いつきが秋に問いかける。
「……確かに、京ちゃんは休んだ方がいいしぃ、今日のことは、僕と紗矢で説明しとくよぉ。
正直まだ、吃驚してるんだけどねぇ、
京ちゃん、あっさり言いたいことだけ言って、出ちゃうしぃ」
やっぱり問い詰める気満々だったようで、不満そうにそう言う秋。
「女じゃあるまいし、だらだら慰めようなんて思うわけないだろ、
ただの『一事件』だ。
自分が巻き込まれたからって、うだうだと友田に構ってられない」
勿論すぐさま反論してやった。
「まっとにかく、俺と秋で話しとくから、お二人さんは部屋でラブラブしとけっ、」
「勿論。」
紗矢の発言に調子乗って、いつきが俺を包むように肩をまわしてくる。
予想してなかった力に、俺の体はよろめき、いつきの胸板に顔を押し付けられる格好になった。
「───っ、!」
途端、頭に走る激痛。
そういえば、最初に友田に頭思いっきり殴られたんだった。
『気絶するくらいの強さ』で。
痛みに耐えながら、両手でいつきにしがみつくように、服を掴めば、
なんだか俺がいつきに甘えているような格好になり、達也がワザとらしく口笛を吹いた。
一方、いつきは俺の声が聞こえたらしく、慌てたように俺を引き剥がす。
「どうしたっ?」
「いや、ちょっと、殴られたところに当たったみたい…」
顔を上げれば、俺の顔を見て息を呑むいつき。
顔に痣はないはず…と、不思議に思っていると、今度は優しく抱き締められた。
「やばい、目潤ませて、
…色っぽい。」
「………はあ?」
思わず声をあげてしまった。
みんな、やれやれといった感じに、そっぽを向く。
「ただでさえ暑いのにぃ、余計暑くしないでよ、」
「ほんとそれ、」
秋と紗矢はそう言って、スタスタと生徒会テントの方目指して歩き始める。
いつきを剥がして、後ろを向けば、達也と会長さんも二人の後を追いかけようとしていた。
「達也、ほんと、……色々ごめん!」
リレーも仕事も。
全部、頼む形になってしまう。
達也は立ち止まり、笑顔でそれに答えた。
「なんか大変だったろうし、仕方ない。
珍しい京哉も見れたことだし、チャラにしてやるよ。」
途端に、柄にもなく真っ赤になる俺を見て、大笑いする達也。
そのまま走って会長さんを追いかけていってしまった。
(う……なんか、複雑なんだけど)
最初のコメントを投稿しよう!