064 暖熱の温度

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「まぁ、……京に笑われないように、鍛えてるしな。」 そう言っていつきは俺の隣に座る。 「笑うってなんだよ…… そんなに貧弱だったか?」 それに、人の身体見て笑うような酷い性格してないんだけど?? そう言うと、ビールを一口飲んだいつきが腹を抱えて笑い出す。 「いやっー、違う違うっ、 ほらー……、 ヤる時に、色々、な?」 茶目っ気たっぷりにそう言って俺と目を合わせるいつきに、案の定、俺の体温が上がる。 「これから食事って時に、……」 顔に集まった熱を吐き出すように、ため息をついて手元のビールを一気に少し多めに飲めば、いつきはまた笑い出した。 「可愛いなーまったく。」 「誰が、」 「京に決まってるじゃん」 「どこがだよ、」 「えー、普段はしっかりしてんのに、どこか抜けてたりするとことか…‥──」 「……」 そう言って、いつきが思う、俺の魅力ってやつを次々と語りはじめたいつき。 インスタントであろう、用意されたパスタを二人で食べながら、いつきの話を半分流して聞くが、どれも聞いてて恥ずかしい。 幼なじみやってただけあって、細かいところを覚えている。 逆に言えば、そんな時から、いつきが自分を想っていたのかと思うと、少し何だか申し訳ない気持ちが生まれて、話を止めたりはしなかった。 代わりに、久しぶりのビールをグビグビと飲む。 酒には強い方だが、追加で持ってきて、もう三本目だ。 ゆっくり食べているせいか、パスタがなかなか片付かない。 「……なによりさ、『一人の人に、純粋に一生懸命な姿』、とか? そういうの、今なら冷静に…… ホントに可愛いと思える。」 恥ずかしいとか思いながらもモグモグと食べていたが、 その言葉に、思わずフォークが止まる。 そんな俺を見て、苦笑するいつき。 「いや、京が保坂のこと、あんなにも一生懸命になっててさ、あの時は、ホントにただムカつくというかなんていうか…… 兎に角、どうしようもない気持ちだったけど。 今思えば、そんな京だからこそ、俺は好きになったんだろーな……とか思うわけ。」
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