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「やっぱ、中々今時いないよ
京みたいに、『THE 青春』て感じの恋する奴は。」
「悪かったな、古臭い奴で。」
「いや、お陰で俺がどんだけ保坂に嫉妬したことか……。
──ホント、羨ましかった。」
そう言って、遠くを見つめるいつき。
横目でそんないつきを見ると、何だかいたたまれない気持ちになった。
達也の時に比べて、あまりに冷めているとでも言いたいのだろうか。
(──でも、確かにそうだ。)
なんだか、落ち着いている自分がいる。
達也の時とは違い、いつきと居ると、『落ち着く』。
これが俺の、求める温もりで。
これが俺の、求める存在。
けど、いつきはまだ不安なのだろうか??
それとも、ただ単に、あの、すれ違っていた頃を思い出してるだけ?
「いつき、」
「ん?」
横にいる恋人の名を呼べば、すぐに振り向く彼。
その唇に、自分のそれを合わせれば、少し驚いたようで目を大きくなった。
けれどもそれは、一瞬だけで。
何度か啄むように表面だけ合わせれば、次第に熱くなるお互いの体温。
気づけば、お互いに舌を入れあい、深く、深く交じり合っていた。
「、……積極的だね、京は。」
「元々、タチを押し倒すことばっか考えてたタチだからね。
そうやって、ちょっと弱ってると、襲いたくなる。」
「はははっ、お見通しってことか」
「俺さ、理由がなんであれ『色んな奴に手出してた節操のない男』を何故か今は好きなんだよ。
ちゃんと愛情表現してるつもりなんだけど……
何回言えば伝わるんだろね...
そんなに過去の熱を掘り起こすようなこと言われると、また戻っちゃうかもよ、俺。」
ふざけ半分でそう言えば、いつきは顔をひきつらせた。
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