064 暖熱の温度

4/12
3555人が本棚に入れています
本棚に追加
/235ページ
「やっぱ、中々今時いないよ 京みたいに、『THE 青春』て感じの恋する奴は。」 「悪かったな、古臭い奴で。」 「いや、お陰で俺がどんだけ保坂に嫉妬したことか……。 ──ホント、羨ましかった。」 そう言って、遠くを見つめるいつき。 横目でそんないつきを見ると、何だかいたたまれない気持ちになった。 達也の時に比べて、あまりに冷めているとでも言いたいのだろうか。 (──でも、確かにそうだ。) なんだか、落ち着いている自分がいる。 達也の時とは違い、いつきと居ると、『落ち着く』。 これが俺の、求める温もりで。 これが俺の、求める存在。 けど、いつきはまだ不安なのだろうか?? それとも、ただ単に、あの、すれ違っていた頃を思い出してるだけ? 「いつき、」 「ん?」 横にいる恋人の名を呼べば、すぐに振り向く彼。 その唇に、自分のそれを合わせれば、少し驚いたようで目を大きくなった。 けれどもそれは、一瞬だけで。 何度か啄むように表面だけ合わせれば、次第に熱くなるお互いの体温。 気づけば、お互いに舌を入れあい、深く、深く交じり合っていた。 「、……積極的だね、京は。」 「元々、タチを押し倒すことばっか考えてたタチだからね。 そうやって、ちょっと弱ってると、襲いたくなる。」 「はははっ、お見通しってことか」 「俺さ、理由がなんであれ『色んな奴に手出してた節操のない男』を何故か今は好きなんだよ。 ちゃんと愛情表現してるつもりなんだけど…… 何回言えば伝わるんだろね... そんなに過去の熱を掘り起こすようなこと言われると、また戻っちゃうかもよ、俺。」 ふざけ半分でそう言えば、いつきは顔をひきつらせた。
/235ページ

最初のコメントを投稿しよう!