064 暖熱の温度

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そんないつきを見て、ビールを一気に飲み干す。 ──手っ取り早く、わからせてやる!!! 沸々とそんな気持ちが浮かんできた。 「ねぇ、」 「なに?」 「約束、覚えてる?」 「──……約束?」 「、はぁ……‥」 惚けるいつきに、盛大なため息をつく俺。 仕方なくいつきを思いっきりその場で押し倒して身体を密着させてみれば、通じた様子。 「でも、……」 「あぁ、怪我なんて大したことないし。 ……優しくしてくれるんだろ? 俺の知らないうちに何人も相手した経験豊富な東雲いつき君のことだから、──もの凄くイイんだろうし。」 「お前なぁ……」 「──ね?」 いつきの上に乗り上げたままそう皮肉を言えば、困ったような表情のいつき。 あぁ、ちょっと酔ってるかもしれない。 いつきの過去にシテキタ事を、こんなにもいつきに対して言ったのは初めてだ。 それに何より、こんなに、 これから受けにまわることに興味と期待が溢れてくるだなんて。 (普段じゃ有り得ないな。) 多分、酒のせいだ。 酒のせいにしなきゃ、自分が可笑しくなる。 「後で文句言っても知らないから」 「勿論。」 それが合図のように、俺がそう言うと、下にいたいつきが身体を半転させて今度は俺を押し倒す形にしたかと思えば、俺の唇を荒々しく塞ぐ。 ピチャピチャと響く水音に、脳と身体が支配されるのがわかる。 お互いの体温が上がるのも。 「ベッド行こっか。」 「……うん、痛いし。ここ。」 好きなだけ貪りあうと、一段落ついて、互いに息をあげたままそう会話して抱き合った格好で、ベッドに向かう。 勿論、キスしながら。 「はぁ、……ん、んぅ…」 「ん、ぁあ、   …いい。いいよ、京哉。」 譫言のようにそう言ういつきは、普段と違って京を『京哉』と呼んだ。 京哉もそれに答えるように、いつきの名を何度も呼べば、次第にいつきの唇は首もとへと降りていった。
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