3555人が本棚に入れています
本棚に追加
/235ページ
それを感じれば、京哉はもう、喘ぐしかない。
ぬちゃぬちゃとした、
粘質のある水音。
高いとは言えないが、
艶やかな京哉の喘ぐ声。
時折途切れる、
いつきの激しい呼吸音。
軋むベッドの音に、
シーツの立てる、布の擦れる音。
その全てが、この空間を振動しあって、お互いの興奮を高める。
「愛してるっ、京哉、っ」
「おっ、れも、」
ようやく言葉に出来たのは、そんな短い会話。
言い終えるのとほぼ同時に、熱いモノが中を満たしていくのを、京哉は感じた。
心と、────後ろを。
(くはっ、熱い、……)
それを感じると同時に京哉のそれも、欲望を吐き出し、白濁を腹の辺りに撒き散らす。
どくどくと全身で感じる、自らの解放と後ろに注ぎ込まれていく液体の温度。
暖かくて、熱い。
心と身体が満たされるとは、まさにこのことだろう。
京哉は、幸せを噛みしめた。
(やっと、
やっと身体も一つになれた)
満足感に二人が浸ること、数分。
京哉の中に深く収まったモノを、ようやくゆっくりと抜くと、いつきは京哉を抱きしめた。
京哉はその抜かれる何とも言えない感覚に、声を漏らした。
「京、……」
「なに?」
「ほんとに、京は、
──京哉は、俺のだよな?」
「今更、」
「あぁ、ほんとに京哉だ。」
子供のように、そう言ってキツく抱き締めてくるいつき。
たまらず、京哉も同じくらいキツく抱き締めた。
物質的に、現実的に、
そうやって物事を確認できて初めて、人間は不確かなモノを理解できるのだろう。
確かに心の中にくすぶっていた不安な気持ちは、いつきの中では、まだ未消化なままだった。
まだ自分は、心の底からはいつきを愛せてないんじゃないか、という不安な気持ちは、京哉の中にも確かに少しあった。
それを、やっと消化出来た。
それを、やっと確かめられた。
礼との件で、アブノーマルな体験をしたからだろうか。
酷く、今が幸せに感じる。
「京、泣いてる…」
そう言って目元を舐められて、初めて自分が泣いていることに気づいた。
こんなの俺らしくない。
そう言ういつきも、どこか湿った目尻。
最初のコメントを投稿しよう!