045 過去と今

5/5
3555人が本棚に入れています
本棚に追加
/235ページ
久しぶりに襲ってきた胸の痛み。 誰にも悟られないように必死で隠し通した想い。 『俺、保坂が好きなんだ』 一年前、京にこのセリフを言われた時は、頭が真っ白になった。 誰にも奪われないように、いつも、一緒にいたはずだったのに、呆気なくとられたんだ。 そう言われた時の俺は、気持ちに余裕がなくて、京の恋を応援することなんかできなくて……… あの時言った言葉に、京はどれだけ傷ついたのだろう。 考えれば考えるほど、自分が浅ましい人間に思えてきて、がむしゃらに色んな奴を抱いた。 それでも忘れることのできなかったこの想いに、果たしてお互いの幸せがあるのかと問えば、いつも答はわからないまま。 京の顔は孤独に蝕まれていた。 一目見ればわかる。 ……京のことなら。 だが、それを察したところでどうする? 『失恋したんだってな、残念だったな、また仲良くしないか?』 って声でもかけろってか? そんなこと、京が望むわけがないだろう? あの時同性愛を否定して京を傷つけた俺が、男を抱いてたんだ。 また、俺は京を傷つけたんだ。 そんな俺に、何ができる?
/235ページ

最初のコメントを投稿しよう!