052 京哉と京

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~京哉視点~ 今日の授業はとぶように終わっていき、気がつけばもう、昼飯どき。 隣の達也は、数学の授業なんかそっちのけて、空腹に顔を歪ませながら机に突っ伏している。 「はいっ、じゃーもうチャイムも鳴るし、ここで授業は終わり。 寝ている奴は起こせ! あ、保坂。 お前、生徒会のくせして最初っから最後まで寝るなんていい度胸だな。 よし、この教材、 全部準備室に運べっ!」 「えっー!だってお腹空いて…」 「四の五の言う前に、さっさと来いっ」 笑いながらそう言う先生。 中々人を使うのが上手い… 「っん…京哉ごめん。 先、食堂行って席とっといてくれる?あ、それとできれば、ラーメン注文しといてくれない?」 「うん、わかった。」 「お、サンキューな」 一緒に食堂に行けないのは残念だが、あんなに気持ちよさそうに眠る達也を起こすべきだったのだろうか? 見た目からしてやけに重そうな教材の山を前にして、げんなりとしている達也を、ふと目で追ってしまう。 ──想いは届かなくても…こうやって見ていることはできる。 それでいいじゃないか。
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