052 京哉と京

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ちょっと前までは、胸が苦しくて堪らなかった、この座席も、この"友達"という関係も。 ふと気がつけば、息苦しさはなくなっていて…。 「きょ────う!」 思わず微笑んでいた俺に、いつ教室に入ってきたのか、いつきが抱き付いてきた。 達也を見て微笑んでいたのを見ていただろうか? いきなりの登場に驚いたのは勿論だが、それよりも、見られていたのかが気になって仕方がない。 「京、何ぼーっとしてんの? 食堂行こ、食堂。」 当たり前のように俺の手を自然なそぶりで絡みとり、手をつなぐいつき。 「あ、のさ……」 「ん?」 「今日、達也も後で合流することになったんだけど……よかったか?」 「たつ…あ、保坂…… あいつが居たら、話せねえじゃねぇか。」 確かに達也が居たら、セフレ云々の話はできなくなる。 「今とかじゃ…無理?それに、達也はまだ来ないから」 「………わかった。」 渋々とそう言いながら歩き出したいつきの顔は、少し不機嫌気味で。 俺が達也を招き入れたのが、どう考えてもその原因で。 よくよく考えてみれば、ものすごいメンツの組み合わせのような気がする。
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